事業分析レポートの作成

事業分析レポートの作成

技術動向分析と自社の事業分析との違い

ランドスケープは全体俯瞰を意味しますが、特定の技術分野の全体俯瞰は、技術動向の全体像は捉えられても、自社の戦略の方向性がよくわからない場合があります。〇〇分野は、ABCの技術要素から構成されていて、「Aは〇社が強く、Bは△社が強く、自社はCで優勢性がある。しかし、進む方向性が今一つわからない…」

 

鳥観図から自社の立位置に視点を変える

母集団を常識的な技術要素等でセグメントとした一般的な特許マップは技術動向は示していますが、それはバーズアイビューであり、汎用的な視点から作成されています。新宿駅から中央公園に向かう時の一般的な地図に相当するイメージです。

しかし、自分の現在位置から見た場合、どの程度の距離感なのか、選択した交通手段は何か、それにより迂回する道はどこか、信号の状況、最短距離で行きたいが障害となる建物は無いか、等の情報の選択と視点の変化が必要です。

左図は、特定用途のロボットに関してシーズ用途をY軸に示した仮の統計図です。Y軸はそれぞれの合計からの降順、X軸は出願人としてアルファベット順で配置しました。これは商用データベース等でデフォルトで出力される図に近いものです。この図ではシーズの多い領域が上部に見て取れます。これが一般的な技術動向図です。

このデータにおいて、母集団ランキングでは排除されていた自社を配置し、Y軸を自社の親和性の高い事業領域を下から上に並べ、X軸においては、現状でコンペティティブな出願人を遠くに配列を変更してみます。点線部分が自社の直近の事業領域とだすると、アミューズメント分野におけるコンペティティブなE社・A社と対抗するには、現在のB社との業務提携は、妥当な状況と言えそうです。しかし、量的には完全な優位性があるとは言えません。現在、D社とは市場ではうまく住み分けていますが、医療福祉分野では提携先のB社と競合しているのではないかと推測されます....等。

上記はダミーデータですが、言わんとするイメージは、お伝えできたかと思います。データの判断には、市場情報、営業部門の情報、開発部門のこれまでのロードマップ、生産設備等の社内で把握している様々な情報が必要です。また、母集団→ノイズ除去→分類→マッピングという単純な直線的作業では、十分なレポートは完成しません。弊社ではこれまでの分析経験から、より現実的に利用価値のある分析のお手伝いをさせて頂いています。

知財の情報分析への所感と方針

さて、最近では、IPランドスケープ(新)と特許マップ(旧)の対比として、いくつかの対比点、例えば、前者が現状分析であり、後者が未来分析であるように語られることが多いと思いますが、これは、現代的な知的財産の情報分析の意義として、今まで不十分だった「事業の将来への行動や価値創造」を導き出すことに力点を持とう、という標題を解釈、定義化したものと思われます。極端な想像をすると、将来的には、産業財産IPではなく知的資産IAの中でもブランドや営業秘密こそがターゲットであり、そこに集約していこう、と言われる時代も来るかも知れません。当社では、設立以来、知財に関する情報分析は、あくまで事業の発展を助けるため、豊富な情報源を持つ知財部門の役割の一つであると捉えており、手法や情報のリソースは問わずに利用する、として、より柔軟な役割達成への工夫やアイデアを提供しつつ、お客様と共にお客様の役に立つ情報分析結果とレポートの完成を目指しています。